子供に現実を突きつける『猫の恩返し』
『猫の恩返し』は子供向けの映画だ。登場人物はみんな優しい。シリアスな側面はあるように見えて、それに迫真性はない。登場人物に被害が出たとしても、せいぜい倒れたり、投げ飛ばされたり、毛が剃れたりするだけだ。このように現実的な危険性は極めて低く、フィクションであるということが強く協調されている。リアルな部分は主人公が街中を歩いている描写ぐらいであろう。
出来すぎている主人公に人間味はない。主人公はあらゆる場面をそのまま受け入れる。猫の世界に行ったとしても、いつものようにふるまう。例え猫になりかけたとしてもその現実を何なく受け入れる。キャラクターという視点を考えると、主人公はどういった人物なのかは見えてこない。
王様の方がよっぽど人間っぽい。私利私欲に飢える王様だが、彼には明るい部分もある。それは、一国の王として国を治めているということだ。その国の猫をどう扱っているかはわからないが、少なくともそこにいる民が存続できるシステムを構築している。従って、人々が生きる土壌を保ち続けているのである。はるちゃんによって狂ってしまうが、彼の王政はそれでも崩れない。
夢見る子供たちに向けてある意味夢の怖さをこの映画では描いている。なんでもおもちゃが手に入る場所がある。しかしながら、その場所には裏がある。『千と千尋神隠し』のそこまで怖さを描写しないバージョンといっていいかもしれない。だから夢ではなくて現実を見つめることの大切さをこの映画では伝えたいのであろう。
この映画はあまり面白くない。安定志向を目指しすぎていて、特徴的な映画には仕上がっていない。同様な物語を求めるのであれば、『千と千尋神隠し』を見た方がいい。あれは攻めていてかつ子供に、必要以上かもしれないが、現実とは何か教えてくれる。かわいいキャラクターに囲まれたこの映画は浅薄な結果を生み出した。
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