『フルメタル・ジャケット』を見て

 躊躇している終わり方を提示する『フルメタル・ジャケット』の終盤は本当にお笑いだった。間抜けな兵士が戦場にいますような描き方をしている。明らかに射撃されるであろう位置にあえて立つのである。その場面を見れば、いかに登場人物たちが切羽詰まっていないかがわかる。焦りを表現しようとしているのかもしれないが、それはあまりにも戦場としてはリアリティに欠ける。
 芸術家としてのキューブリックは一つの場面を芸術的に描き出すのは上手である。どの場面をみても、外見だけは一丁前である。兵士が歩いて行くシーンはどれも魅力的で、作りこみが面白いと思わざるを得ない。その移動という場所に焦点を当てると、あまりにもリアリティ(現実性)に富んでいる。細部までこだわった場面は視聴者を虜にする。
 登場人物たちの内なる葛藤を表現することは今作でも苦手としてる。熱烈な俳優陣による熱心な演技は素晴らしい。けれども、彼らの演技はどこか空白で中身のないものになっている。同僚が狂ってしまうシーンでは、やはりどこか疑問が残る。
 結論としてはこれは絵画であり、素晴らしい芸術作品である。一つの細かい物語に着眼し始めると、この映画は面白くなくなる。それにもかかわらず、キューブリックの芸術性は欠点として現れるその人物描写を超えるような魅力があるのである。

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